元々が子供の寄り合いから出来たネットの為、明確な組織形態は存在しません。
たまり場も、主な用途は遊び場だったり待ち合わせ場所だったりします。
また、後述しますが新興のネットワークの為、（人員だけはやたら多いですが）勢力もさしたる程ではありません。
ただ、隠れ里に起因する行動圏の広さと神出鬼没性を活かし、旧来のネットの監視が行き届かない場所での（主に子供社会の）平和を維持するのがメインになっています。
とはいえ、その活動も少年探偵団的なノリが強いわけですが。

　何分規模が大きい上に入れ替わりが激しい為（転校生として一時やってくるだけ、というメンバーもいます）、ネット全体の結束力はさして高いものではありません。
ただ、顔見知り同士でのそれは強く、全体的なイメージとしてはいくつかの友達グループを包括する形で「フシギノミカタ」が存在している、という風になるでしょう。

　「フシギノミカタ」のたまり場は真紅の住居兼皆の遊び場でもある隠れ里「ぼくらのひみつきち」です。
夕陽ヶ丘町の地下に、ありえざる構造を持って存在している広大な空間であり、容積的には村一つ分の人口を収容しきれる程です
（これにしたって、存在が解っていて利用している空間に限られます。
恐らく全容は東京23区にほぼ等しい規模かと思われますが、その辺誰にもさっぱり解っていません。探検シナリオとか面白そうですね）。
内部は部屋と通路に分かれており、部屋と部屋は（時として4次元的な接続をしながら）複雑かつ有機的に繋がっています。
一部現実世界と重なり合うように存在しているところもあり、マッピングしていけばどう考えてもビルの中だったり空中に出たりする場所も存在しています。
一見迷いそうですが、不思議と目的地へはすんなりいけてしまいます。或いは中にいるものになんらかの錯覚を見せているのかもしれませんが、真相は真紅にもよく解っていません。

　隠れ里へは現実世界から幾つかのゲートが通じています。ゲートは主に茂みや壁に開いた穴、人目に付かない裏路地のゴミ箱の中にあったりしますが、中には廃屋の扉から通じているものもあります。
大体東京都内全域をカバーしているようですが、ゲートが一体幾つあるのか、何処に開いているのか、移動したりするのかといった事を知るものは（真紅を含め）誰もいません。
夕陽ヶ丘町内に存在するゲートはあらかた解っています。
＜地域知識／夕陽ヶ丘町＞に成功すれば自分の今いる場所の近くにゲートがあるかどうかが解ります。
失敗した場合、「無い」のではなく「分からない」だけという事に注意して下さい。
ゲート、とは言っていますが別段瞬間移動が可能なわけでは無く、［門］の妖力のようなものです。
レベルが問題になる時は、4Lv相当としてください。

　隠れ里内部では、携帯電話やコンピュータ、ゲーム機に代表される先端電子製品（TL7以上のもの。テレビはブラウン管使用のものに限る）が使用できなくなります。
また、隠れ里の外から中へは携帯電話が通じません。有線電話なら通じる為、隠れ里内にある真紅の部屋、及び皆が集まる大広間にはダイヤル式の黒電話が設置されています。
副次的効果として、隠れ里内ではそういった電子機器の付喪神や電子機器関連の妖怪たちもその力を大きく削がれ、下手をすれば動けなくなってしまいます。
これらは主に真紅の趣味によるものです。メンバーからは掟の撤回を強く求められていますが、彼女が聞き入れた事はありません。

　流石に連絡網構築の面では問題が多い為、紅屋（真紅が経営する駄菓子屋です。後述）にパソコンを置いています（ですが、真紅は触ろうともしないため店の片隅で埃を被るままにされています）。

「ねぇ、ねぇねぇ、それから？　それからどうなったの？」
「ゲーム機なんかで遊んでいちゃ駄目よ。そんなものが無いと遊べないようだと、
　無くなった時何にも出来なくなってしまうではないの」
「みんな、お疲れ様。もんじゃ焼きおごってあげるわ」

　「フシギノミカタ」の元締めです。
正体は「大禿（おおかぶろ）」という振袖を着た童女の姿をした妖怪です。
人間の姿としては、12歳くらいのやたら長い（引きずっています。不思議と痛まないし汚れないのですが）黒髪に赤い眼を持つ少女と、
温和な印象を与える70〜80歳代の老婆のふたつを持ちます。

　精神操作系妖術を得意とし、（ネットの長らしく）記憶操作などの後始末を担当しています。
ですが戦闘はからっきしで、肉体的にも人間と大して変わりない為（追加HPはあるのですが、流石に）、
ともすれば足手まといになる事があるかもしれません（一応護身用として、電撃妖術を心得ています。威力３−精度１４で「瞬間」「接触のみ」の増強と限定付きです。 真紅はこれに「まあかちゃんこれだぁ☆」というある意味どうしようも無い名前を与えています）。
他に、「誰彼迷唄（たそがれめいしょう）」という名の妖術も心得ています。
この威力２０−精度１８の広範囲型妖術は、効果を維持する為に真紅が範囲の中心で歌を唄い続けていなければならないものの、範囲内の全ての人間に対し妖怪の存在を何の不思議にも思わなくさせるという恐るべき効果を持つといいます
（真紅自身は使いたがりませんが。「歌の内容が辛気臭い」そうです）。
また、無駄に人脈が広いらしく、しょっちゅうトラブルが持ち込まれたりしてきます。

　非常に好奇心が強く、しかも大騒ぎが好きな為たいていの事に首を突っ込みたがるのですが、
ネットの元締めという地位と生来の怠惰さの故、殆どはメンバーに調べに行かせて結果を聞くという形になります。
気前がいい為、事件解決時には盛大に奢ってくれたりするでしょう。
自身が率いるネット、及びその構成メンバーの実力を過大評価している節はありますが、
解決できないトラブルを持ち込む事はありません。……多分。

　何分旧い考え方をしている為、携帯電話やコンピュータといった先端電子製品を忌み嫌っています。
そんなものでは本当の意味で遊ぶ事なんて出来ない、というのが持論です。
ネットのメンバーに対しては、若干の距離を取りつつその行いを暖かく見守る（時々ハラハラしたり地団太踏んだりしてますが）という立場です。
一応元締めなのでそれなりに偉い筈ですが、本人はメンバーと友達のように付き合いたいみたいです。
それを汲んでか、みんなもしゃちほこ張らずに好き勝手に呼んでいます
（「団長」だの「リーダー」だの。「真紅」と呼び捨てにするのもいますし、
「まあちゃん」なんて呼び方するのや、果ては「ボス」とか「姐御」とかもうばらんばらんです）。

「はい、いらっしゃいな」
「ああ、駄目よ。ひとりでそんなに欲張っちゃあ。みんなが買えなくなるじゃあないの」
「全部で150円よ。ありがとうね」

　「フシギノミカタ」の表向きの顔で、真紅が経営しています。
主な客は付近の小中学生及びネットのメンバーで、それなりに繁盛しているようです。
店の勝手口（構造上、勝手口から中に入る事はできません。裏手にある建物が邪魔をしているのです）は隠れ里に通じるゲートになっています。
ここのゲートは真紅の部屋に通じています。
勝手口は店先からは見えない位置にあるので、人間の客にゲートの存在を知られる事はありません。

　店の奥には古いパソコンが置かれています（Windows95機です）。
パソコン通信による連絡網構築の為しぶしぶ購入したものですが、結局使われず埃を被るままになっています
（たまにメンバーが起動させてゲームをしています）。
ネットワーク間での連絡については、時折開かれる付近ネット同士の会合や友好ネットからの情報伝達、
並びにネットメンバーの個人的繋がりに頼っている為、夕陽ヶ丘は（このIT技術全盛の時代だというに）今だ情報の空白地帯です。
無論付近ネットも改善の要求を突きつけてはいますが、真紅が聞き入れた事はありません
（「嫌ぁよ。何が哀しゅうてそんな頻繁に便りを送らねばならないのかしら。『便りが無いのが善い便り』と言うではないの」）。
　このパソコン、実は妖怪です。
生まれたばかりの悪戯ものなウィルス妖怪
（見た目は虫歯菌に酷似しています。絵本などで描かれる様な、角生やして紫色のタイツ着て三又槍持ってるアレです）が侵入したのですが、
あまりの古さにろくに手がつけられず（彼が生まれたのはWindowsXPが発売された頃でした）、逆に出られなくなってしまっています。
仕方が無いのでパソコンを自身の肉体としつつ強化していって、
今や生意気にもメインフレームクラスのハイスペックを叩き出せるのですが
（言うまでも無くインターネットにだって繋げます。どういうトリックか電線使って接続し（よって無料。無茶苦茶だ）、
通信速度100Mbps以上を弾き出せます。
しかも海外サイトだってウィルス妖怪が通訳してくれます（でもアダルトサイトは覗けません。残念！））、
如何せんユーザーが真紅なので使いこなす所の話ではありません。
まずは彼女にパソコンの使い方を教えるのが先決、と表計算ソフトの存在を示唆してみたりしてますが、
時折計算を間違える悪癖の所為で真紅からは全く信用されていません（「また間違えた。やっぱりぱそこんは駄目ね」）。
現在、彼の主な仕事は真紅とオセロや将棋をする事です（しかも普通に盤使って）。

　この紅屋にはある噂があります。
ここで売られている菓子類の一つに切手シール付きのチューインガムがあるのですが（イチゴ味・メロン味・コーラ味の3種で、各10円です）、
その切手シールの中に、たまに渦巻きを背景に赤い字で「妖」とだけ書かれているシールが入っています。
そのシールを官製葉書に貼り、表面に「フシギノミカタ」、裏面に困っている事を書いて紅屋の隣にあるポストに投函すると、
何処からともなく困っている事を解決しに助けがやってくる、というものです。
この噂はおおむね最後に「但し、くだらない困り事だと逆に連れさらわれて二度と家には帰れない」という警告がついています。

　結論から言えば、この噂は真実です（連れさらわれた者は一人としていませんが）。
真紅は客としてやって来る子供の中に妖怪関連で困っている子供を見つけると、
妖術を使ってその子に該当するシールが封入してある菓子を買わせているのです。
件の郵便ポストは付喪神である、とも内部に隠れ里へ通じるゲートを持つ、とも言われていますが、
真相は真紅にしか解りません（彼女もにやにや笑うだけでちっとも教えてくれません）。

「ほら、宿題は済みましたか？」
「ええ、みんないい子たちですよ」
「忘れないで。あなた達の家はここ。寂しくなったら、ここで過ごした日々を思い出して」

「フシギノミカタ」に所属する妖怪たちのうち、里親の居ないもの達の戸籍獲得手段のひとつ。
経営状態は良好。子供達の待遇も良い。院長「岡島数奈」は真紅の友人。温和で上品な初老の女性。